船橋市では駅前において喫煙所を設置するために路上喫煙およびポイ捨て防止条例を改正することに対してパブリックコメントを実施しました。
これに対して2020年12月24日このパブリックコメントに対して、提出された意見と市の考え方に対して公表が行われました。
ほとんどの意見が喫煙所設置に反対でした。
一部の意見として喫煙所の設置に好意的な意見がありましたが、ほとんどは喫煙所の設置に対して反対の意見を提出されていたようです。船橋市にて意見をある程度まとめてしまったので細かいところまではわかりませんが、その理由としては次の大きく3つでまとめられそうです。
1 喫煙所を設置してしまった場合、その周囲の受動喫煙は避けられない
2 一部の喫煙者のために税金を使うのであれば、市民の健康のために使うべき
3 コロナウイルス感染拡大防止のため、喫煙所を設置すべきではない。
船橋市の回答を見てみましょう
1 喫煙所を設置してしまった場合、その周囲の受動喫煙は避けられないことに対する回答は下記の通りでした。
・指定喫煙所の設置にあたりましては、厚生労働省による「屋外分煙施設の技術的留意事項について(通知)」(健発1109第6号)を遵守し、たばこの煙が容易に漏れ出ないようにいたします。 具体的には、指定喫煙所周辺の通行人への配慮のため、高さ3m程度のパーテーション(同通知では2~3m程度と記載)で囲み、出入口にはクランクを設ける等いたします。また、送風機を設置して煙が上空に抜ける状態での運用を予定しております。
・路上喫煙と受動喫煙の防止を目的とした指定喫煙所設置の実証実験期間は概ね2年間と考えており、実証実験として指定喫煙所内外の粉塵濃度測定、指定喫煙所周辺通行人アンケート調査、路上喫煙率調査等を行います。
・指定喫煙所の場所の周知を図り、望まない受動喫煙を生じさせることがない場所となるよう配慮いたします。
喫煙所を設置すると受動喫煙が発生するとの意見に対して、なるべくたばこの煙が漏れないようにするという回答に納得する人がいるのか疑問です。
2 一部の喫煙者のために税金を使うのであれば、市民の健康のために使うべきことに対する回答は下記の通りでした。
・清潔、安全及び快適な生活環境の確保に向けた取り組みの強化を図るため、罰則規定の強化と罰則規定の強化に対する喫煙者への配慮及び罰則規定との相乗作用による路上喫煙と受動喫煙の防止を目的とした指定喫煙所(実証実験)の設置は必要であると考えております。 この実証実験の期間は概ね2年間と考えており、その間に指定喫煙所内外の粉塵濃度測定、指定喫煙所周辺通行人アンケート調査、路上喫煙率調査等を行い、実証実験を継続するか否かなどを総合的に判断したいと考えております。
これは回答になっているのでしょうか?
3 コロナウイルス感染拡大防止のため、喫煙所を設置すべきではないに対する回答は下記の通りでした。
・指定喫煙所を開設する際は、喫煙者が一定の距離を保てるよう指定喫煙所の入場制限、フロアマーキングの設置、利用者に対する注意喚起等の掲示など感染予防に努めて、保健所と協議のうえ開設する予定です。 なお、開設時期につきましては、新型コロナウイルス感染症の発生状況等を見極めたうえで慎重に対応いたします。
喫煙所を設置しなければ感染する機会は発生しません。多くの企業ではコロナウイルス感染拡大防止のために喫煙所を閉鎖しています。にもかかわらず市が率先して喫煙所を設置する意味はどこにあるのでしょうか?
たばこ規制枠組み条約(FCTC)違反との声もありました。
どのような指摘があり、第何条に抵触しているのかを省略してしまっているので細かいところまではわかりませんが、船橋市としては下記のような考えだそうです。
・喫煙所設置の寄贈については、たばこ規制枠組み条約(FCTC)及びガイドラインや国内法に抵触していないと考えております。
どの部分の何条に対して抵触していないかの記載が欲しかったです。第5条3項に関するガイドラインは、国営たばこ産業を含む、たばこ産業による干渉がたばこ規制政策の多くの領域に影響を及ぼすという認識を 踏まえているとの見解もあるようなので、たばこ会社と自治体が喫煙を奨励する目的で喫煙所を設置するのには問題があるのかもしれません。
千葉市の結果も引用されていました。
千葉市でも海浜幕張駅前のたばこ会社のお金で設置した喫煙所があり、2年をかけて実証事業を行ってまいりました。ただ、実証結果については1年分の結果しか公表しておらず、今の時点では、本当に効果があったか結論はでておりません。
千葉市の喫煙所に関する意見は以下の通りです。
・路上喫煙と受動喫煙の防止効果の向上を目的として喫煙所を設置するにあたっては、その効果を十分に検討してほしい。千葉市の実証事業では、ごみの散乱数や過料件数の減少が見られたとの報告があるが、設置後7~12か月における路上喫煙者数は設置前と変化がない。喫煙所を設置しても路上喫煙が防止できない可能性がある。
これに対する船橋市の回答は以下の通りです。
・千葉市の実証事業では、平均過料件数(1.45件/日から0.70件/日となり51.7%減少)や平均散乱ごみ数(10.6個/回から7.6個/回となり28.3%減少)など、喫煙所設置後7~12か月についても効果が認められると考えております。
%で見れば大幅に減少している項目があるのもわかりますが、1.45件/日が0.70件/日に減ったとして本当に効果があったといってよいのか疑問に思います。仮に一日1000件近くあったものが、700件まで減少したいのであれば効果があったと何となく理解できるのですが、1.45件が0.70件では説得力がないように思われます。
また、これらの効果があるとした項目については、ポイ捨てへの効果であって受動喫煙については一切関係がないということを忘れてはいけません。
全体を通して感じたこと
提出された意見と船橋市からの回答がかみ合っていないのが印象的でした。すでに喫煙所を設置するのが決定事項であったためかと思われますが、もう少し船橋市と関連のある人の話を聞いてから条例の改正や喫煙所の設置を決定してもよかったのかもしれません。
また、すでに千葉市で行われている実証事業においても、コロナウイルスによる対応により実証事業の結果にどのような影響がでてくるのかわかりません。どのような喫煙所を設置してもその周囲に受動喫煙が発生してしまうので、船橋市は無理して喫煙所を設置して実証事業を行う必要はないかと思います。